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11月20日 記者会SNS 電子政府システムで議論②

国税庁電子申告システム「e-Tax」および、「e-Tax」と市販の会計ソフトを連携させる“便利なソフト”の問題。記者会SNS〔Y-GAYA〕の書き込みは、国税庁電子申告システムの構築を受注しているNTTデータが、一方で“便利なソフト”を市販するのは二重取りではないか、という指摘だった。これに対してNTTデータから反論が寄せられ、不動産ジャーナリストT氏がPPP(Public Private Pertnership)の考え方を提示した―というのが前回までの話。
 T氏はフリーランスなので、本来なら原稿料を払ってあげなければならないのだが、それは別の機会に穴埋めすることにして、氏の指摘を引用する。

 ■ 行政サービスのSaaS化
 発注は大きな権力です。だれもその権限を手放したくないから、各府省は自分たちの下に組織を作るのでしょう。
 公共事業でも国土交通省は、各地方に整備局をつくり、さらに都道府県庁の土木部長にも役人を出向させて、日本全体の土木工事をコントロールする仕組みを作ってきました。その国土交通省でも、農村、漁港の土木工事までコントロールすることはできませんでした。
 米国のように大統領制で、政権交代によるチェックが働くのなら良いですが、日本では政権交代があっても霞ヶ関を解体するのは難しいように思います。
 では具体的にどのような方策があるかというと、私にもよくわかりません。米国では、警察と消防以外の行政サービスをPPP方式で、全て民間企業に委託する地方自治体も出てきています。日本でも、大坂の加西市などでPPPによる業務委託の検討が始まっています。自治体が自ら仕組みを作るのではなく、サービスだけ外部から提供を受けるという意味では、行政サービスのSaaS化なのかもしれません。
 米国では、大手建設会社などが行政サービス提供会社を設立して、いろいろな地方自治体のサービスを受託する動きも出ているようですから、それが広がれば自ずと経済合理性が働いてインターフェースなどが統一されていくかもしれませんね。まだ、いろいろと問題点はあるかもしれませんが、NTTデータが行政サービス提供会社としてやっていくのなら、準国営企業にならなくても可能だと思います。

 ■ システム構築かサービス利用か
 T氏の示唆は、たしかに一定の合理性を含んでいる。そして実を言えば、T氏が提示したPPP方式ないし行政サービスのSaaS化については、この春から中央官庁の一部で検討(というか勉強会)が始まっている。ただ、ここで整理しておかなければならないのは、システムの構築・運営とサービス提供の主体を切り分けて考える必要があるということだ。別の言い方をすると、「自前の情報システムを持つ」か、「サービスを利用するか」の切り分けである。
 PPP方式は、民間が先行して構築しているシステムを利用する、つまり「サービスを利用する」と言い換えていい。例えばヤフーのネット・オークションの仕組みを行政機関がゼロから作るなどというのは愚の骨頂である。そのことが分かっていたから東京都や福島県喜多方市は滞納者の差押え物件をヤフーのネット・オークションで競売した。両団体がヤフーの仕組みを利用して成果をあげたのをきっかけに、現在はどの市町村も実施している。この場合は「サービスを利用する」方式である。
 あるいは静岡市は総務部門の業務を民間事業者にアウトソーシングした。文房具の購入、事務用書類の作成にかかる費用、要員の人件費や就労時間などは、受託した事業者が創意工夫でやりくりする。同じように札幌市は市民向けの広報や問い合わせを民間のヘルプデスクサービス業者に委託した。「冬になると雪の捨て場など、市民からの問い合わせが急増する。毎年のことだが、市の職員をそのためだけに増員することができなかった」―市民まちづくり局職員として民間のヘルプデスクサービスを取り込んだ金田博恵氏は、当時の事情をこう語る。「市民と行政のコミュニケーションは人による対応が基本」と考えた結果、人手による電話応対方式を採用した。
 住民票の受け渡しを市内のお米屋さんやクリーニング店に委託した千葉県市川市、コンビニで社会保険料の払い込みをできるようにした同県八千代市もそうだ。このような事例は全国にかなりある。それでいうと公的福祉介護サービスの民営化も同じ線上にあるように見えるが、しかしコンビニ収納と公的福祉介護サービスとは似て非なるものなのだ。

 ■ 公的サービスと民間サービス
 コンビニ収納や住民票の受け渡しは、業務を委託した行政サイドにも、委託を受けた民間事業者にも特別な経費負担を発生させない。対して公的福祉介護サービスは、公的介護制度の保険料でまかなわれ、サービスの内容は国の制度によって制約される。サービス実務を受託した民間事業者は割り当てられた保険料のなかで経費を出し、かつ利益を追求する。公的保険制度と民間事業者の利益が共存するのはなかなかに難しい。民間のシステムやサービスを利用するPPPとは本質的に違う。
 公的介護サービスの話で“ついで”を書くと、1990年代後半に東京・世田谷区の福祉公社が全国から脚光を浴びた。介護サービスを提供するのはボランティア活動に従事している人たちだが、サービスは有償化されていて、介護を受ける人(ないしその家族)はサービスに応じてチケットを公社から購入する。入浴サービスなら1回800円、深夜の徘徊監視なら1,000円という具合である。NPO(非営利特定活動)が関心を集めていたとき、〔ボランティア=無償の社会奉仕〕という固定的な概念を打破するきっかけとなった。
 世田谷福祉公社またはNPOが示したのは、〔官〕でも〔民〕でもない〔公〕の役割というものだった。〔官〕とは、その運営が住民の税金でまかなわれ、地域や国の安心・安全(秩序)を維持・発展させるために、合理性を持つ規則のもとで活動する。その合理性は民主主義と平等主義によって裏付けられている。
 〔民〕とは、合理性を持つ規則のもとで活動する点では同じだが、その運営が個人または民間組織の資金によってまかなわれ、特定の人や組織の満足度を目的とする。その場合の合理性を裏付けるのは資本主義である。〔民〕は資本を再生産しないと運営が継続できないので、結果として利益を追求することになる。
 ところが〔公〕は、税金で運営されることも、利益を追求することもない。その合理性を裏付けるのは、おそらく原社会主義―マルクス的社会主義ではなく、地域共同体の意識に基づく協働主義―というものであろう。社会公共の利益を提供する第三者機関が健全に機能することによって、〔官〕と〔民〕の軋轢を解消し、溝を埋めることができる。

 ■ 依然20世紀パラダイム
 PPPは〔公〕の考え方にほかならない。だが、〔官〕は依然として20世紀パラダイムで動いている。ITに限っていうと、国や地方公共団体は「自前の情報システム」「自前の組織」を持ちたがる。「自前の情報システム」「自前の組織」が必要だ、という言い分を頭から否定するものではないが、「自前で作る」ことが必然であるかどうかには疑義が残る。
 その整理がついていないまま、電子政府プロジェクトはスタートしてしまった。筆者が提示した準国家機関としてのIT調達専門企業、T氏が示唆するPPPの議論が行われた形跡はない。それがNTTデータ二重取り論争の背景にある。そこで、この視点に立って次週25日から、本論を「電子政府、抜本見直しの方策」と改題して探ることにしたい。

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